残業代支払の留意点

時間外手当を正当に支払わないサービス残業(賃金不払残業)が

社会問題化し、厚生労働省が指導を強化しています。

法的基準を満たす時間外労働時間の把握、適正な割増賃金の計

算は、使用者にとって、避けて通ることができない問題になってき

ています。

時間外手当の不払いで訴えられると会社の経営を左右する大問

題に発展しかねないため、時間外労働・割増賃金に関する
正しい

知識
を持ち、併せて日常の労務管理を的確に行っていくことが重要

な課題になります。

当事務所では、時間外労働と割増賃金に関する
法的基準、業務

内容の実態に即した時間外手当の支払い方、労務管理上の留意点


等について親切・丁寧にアドバイスさせていただきます。


       
  【時間外労働削減のポイント】

 @要員配置の見直し

 A部門間
応援体制の確立

 B従業員への
残業削減協力要請とチェックシートによる
   状況チェック


 Cノー残業デーの実施

 D原則的時間外限度時間の設定

 E残業の「
届出制」または「申請・許可制」の導入

 F
変形労働時間制(1か月単位または1年単位)の導入

 G
代休または休日振替制度の導入



【一口メモ@】

 次のような場合には時間外労働とは思っていなかったのに実は

 労働時間だった
ということになり、時間外手当の不払いで訴えら

 れることになりかねませんので注意が必要です。

  @
朝の準備体操について自由参加であることを明確にしていな

   かったとき。

  A
就業後ダラダラと居残っていてタイムカードを押されたとき。

  B
就業後の研修について自由参加であることを明確にしてい

   なかったとき。


【一口メモA】

 事務・技術部門には、「タイムカード」は適さない、と考えられ

 ます。

 事務・技術部門は
出勤簿をベースとして、時間外労働等を行う

 ときは「
申請・許可制」とするのが業務の実態に合っていると考

 えられます。

 また、営業手当、業務手当、研修手当等の
定額手当の中に、

 一定時間(20〜25H)の
時間外手当としての趣旨を含ませること

 も一つの方法ですが、その場合には就業規則にその旨を
明記

 することが必要です。


【残業代を賃金に含ませることの

           正当性について】

 判例では、「時間外労働手当を固定額で支払うことも、法所定の

 割増賃金を上回っている限り適法」(関西ソニー販売事件、大阪

 地裁昭63.10.26)とされており、法所定分を上回っている限り

 適法とされています。

 また、別の判例でも「基本給に割増賃金が含まれているというた

 めには、@割増賃金にあたる部分が明確に区分されていること

 A法所定の割増賃金との差額を支払う旨が合意されていること、

 が必要である」(国際情報産業事件、東京地裁平3.8.27)とも

 されています。

 同様に行政としても『基本給は、「所定労働時間分の賃金」とする

 ことが望ましいが、基本給に所定労働時間外の労働時間分の

 賃金を含めて設定することは違法とはいえない。また、このような

 場合は、基本給の内訳を明示する必要がある。すなわち、所定労

 働時間分の賃金と、時間外労働分の賃金をそれぞれ明示すべき』

 (都内労働基準監督官見解)、と判例を踏襲する内容の見解を

 示しています。

 つまり、
基本給や手当等の賃金に、あらがじめ一定の残業代を

 含ま
せること自体は適法と考えられているいるわけです。

 ただし、判例や行政解釈にあるように、数々の
注意点もあること

 を忘れてはなりません。


【残業代を賃金に含ませるときの

              注意点について】


 
基本給や手当等に、あらかじめ一定の残業代を含ませるときは、

 次のような前提条件が必要と考えられます。

 1.賃金に含まれる残業代部分を明確にし、それが
何時間分の

   割増
賃金になるのかについて明示すること。

 2.実際の残業が、賃金に含まれている部分を
超える場合は、

   その
差額を支払うことおよびその合意ができていること。

 また、さらには次のような点も怠らずに注意しなければならない

 でしょう。



○労働契約だけでなく、就業規則上の根拠も必要となる。

 この場合、次のような内容を規定する必要がある。

 @基本給や手当等に時間外、深夜、休日割増賃金の一部

  が含まれることとする。

 A超えた分は差額を支払うこととする。

 B割増分を一部含むといえども、実際の残業は36協定の

  範囲内において行うこととする・・・等。

○すでにいる従業員に適用させる場合には、
不利益変更

  問題が生じないよう、
個別同意が必ず必要となる。

○長時間労働の温床ともなり得ることから、健康に対する配

  慮措置を講じること。


 この手法は、賃金の計算や管理が非常に複雑になり、考え方に

 ついても理解しにくい面があることは否めません。

 ただ、現在ではこのような手法を容易に導入できるようなソフト

 ウエア(http://www.staff-c.com  http://www.mscjapan.com)

 も販売されていますので、こういったものを活用することも

 できます。


       【営業手当の意義と対応の留意点】
 
 
通常、企業は、外勤営業等に従事している営業社員に対して

 「営業手当」等の名目で一定の金額を支払っています。

 いかなる名目で営業手当を支払っているかですが、それは

 各企業においてまちまちです。

 すなわち、営業に従事する従業員の技能に対する報償、営業

 実績に対する手当、被服・靴等の消耗の補填さらには時間外

 労働に対する手当というように企業によってさまざまな性質を

 付与しているものと思われます。

 このように多数の企業において支給されている営業手当では

 ありますが、その法的な意味づけを認識していない、あるいは

 その法的な意味づけは認識しているがそのことを賃金規程等に

 反映することができていない企業も多いものと思われます。

 このことから生ずる紛争の最たるものとしては、営業手当に

 時間外割増賃金としての性格を付与し、いわば時間外割増

 賃金の計算の煩瑣を避けるために固定給として営業手当を支給

 していた企業において労働者が時間外割増賃金の支払いを

 求めるというものです。

 時間外割増賃金の支払いを求める事案は、主に営業手当を

 時間外割増賃金の定額払いとして支給していますが、当該

 営業手当以上に時間外割増賃金が存在するという場合に問題

 となります。

 この点そもそも時間外割増賃金の定額払いが許されるか否か

 が問題となりますが、
労基法に定める計算方法以外であっても

 同法により算出される額以上の営業手当が支払われている

 ならば、労
基法違反とはなりません。(昭24.1.28基収

 3947号参照)

 それゆえ、営業社員に対して営業手当のみを支払い時間外

 割増賃金を支給しないという取り扱いも、直ちに違法となるもの

 ではありません。

 ただし、労基法により計算した額より営業手当のほうが少ない

 場合には、その
差額を支給しなければならないことは当然です。

 かかる紛争を防止するためには、
就業規則において時間外割

 増賃金を含めて営業手当を支給する旨を明示することが不可欠

 であるとともに、実際の法定時間外労働時間や深夜労働時間を

 基準にして算出される割増賃金の額を上回っている必要が

 あります。


   
【営業手当について就業規則に記載する場合の条文例】

 

 第○条 営業手当

     営業等主として外勤業務に従事する者に対して、次の

     額の営業手当を支給する。

                   
月額 ○○○○円

   2、営業手当の額は、外勤業務・時間外業務の特殊性を

     考慮して定めるものとし、その額の中には
月○○時間

     
の時間外割増賃金を含むものとする。

     なお、実際の時間外労働時間がその時間を超過した

     ときは、その
差額を時間外手当として支払う。


       

  (注)定額の営業手当を支給する場合には、その額が対象者全員について

     月○○時間の時間外割増賃金相当額を上回っていることが必要です。

     昇給等があった場合には、上記の条件を満たしているかどうかについて

     確認をしておくことが必要です。



           【残業代を賃金に含ませる手法の

       今後の展望について】

 
 
この手法を使った対応策は、一部に定着しつつあるといえます。

 これまでは終身雇用制の社会構造のため、会社のために残業

 もいとわず行うという風土がありました。

 しかし、終身雇用制も崩壊しつつあり、企業のほうも手厚く賃金を

 支払うことが不可能なほどの厳しい国際競争の中にあります。

 その一方で、
コンプライアンス(法令遵守)が求められる時代にな

 ってきました。


 このような状況の中で、労働時間・割増賃金の問題が噴出して

 きており、企業としては、曖昧な対応は許されなくなってきて

 います。

 日本の賃金は高水準であること、サービス業が増えていること、

 24時間営業等の店舗やニーズが増えてきていること、そして、

 年俸制や成果主義への移行が進んできていること等から、もは

 や時間対応型の賃金システムではなく、成果対応型の賃金

 システムへと社会のニーズは変わってきていると考えられます。

 そのような中で、法体系は旧態依然のままであり、この「残業代

 を賃金に含ませる」という一見奇抜にみえる手法も、今後増えて

 いくのではないか、と考えられます。


                 
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