スポーツビジョンコーナー
スポーツビジョンという言葉を、耳にしたことあります?
ない?
では、動体視力という言葉ならば聞いたことあると思います。
「イチロウ選手は、並外れた動体視力がある」なんて記事が、よく載ってますね。
これも含めた、いくつかのスポーツに必要な視機能を「スポーツビジョン」といいます。この分野における研究は、1978年にアメリカのオプトメトリストの協会(A.O.A.)においてスポーツビジョンセクションができ、オプトメトリストが中心となって今日まで研究は続けられています。日本においては1988年に東京メガネが中心となって、スポーツビジョン研究会が発足しました。
どうして、世界のスポーツ・ビジョン研究が眼科医が中心でなく、オプトメトリストが中心かというと、どうしてもレンズ光学の知識、正常な視機能(特に屈折検査・輻輳・開散・調節)に対する細かな知識が要求されるからです。トレーニングという観点から見れば、通常のビジョン・トレーニング(以前、ニュースステーションでは、ビジョン・セラピーと紹介されました)の応用と考えることが妥当でしょうから、日本でなら視機能訓練士(O.R.T.)の仕事の部分も多く含むのですから、O.R.T.の参加こそは望ましいと個人的には考えます。
(他のコーナーでも書きましたが、O.R.T.は、本来、オプトメトリストの一つの専門分野だと個人的には考えています。ただ、残念なことに、トレーニングについても、その主権がO.R.T.自身に無く、しかも本来の仕事である視機能訓練業務を行っている環境に務められる人たちは、極めて少ない。その上、常に医師の監督下でないと活躍できないのですから、WCOが示すオプトメトリストの独立性を持てない姿であり、とても残念に思います。)話がそれましたが、先のアトランタオリンピックで、ボシュ&ロム社がスポンサーとなって、スポーツビジョンラボを開設していたのは記憶に新しいとこです。
日本においては、東京にある東京メガネ本社、広島そごう、愛知県豊田そごう、愛工大の石垣教授の研究室、名古屋にあるキクチ眼鏡専門学校(Kikuchi college of optomtry)に、測定器材が揃っています。これらは全て、スポーツビジョン研究会のメンバーです。もうたくさんのデーターが、そこには詰まってきています。
また、例を挙げたらいっぱいありますが、ボクシングの元世界チャンピオンの飯x選手をトレーニングした内藤オプトメトリスト、甲子園常連校 長崎日大付属高校の球児たちをトレーニングした中村オプトメトリストなどなど、着実に実績はではじめています。
スポーツビジョンの項目とトレーニング
^静止視力
_動体視力
`深視力
a瞬間視
b眼球運動
c眼と手の協応動作
d輻輳・開散能力
e調節能力
f視野
gコントラスト感度
hイメージングなどの能力が必要になります。以下に、それぞれについて解説していきます。
^静止視力
これは言うまでもなく、いわゆる視力です。スポーツビジョンにとって、いや、視機能全般にとっても、これは基本。家で言うならば土台って奴です。どんな立派な家も、しっかりした土台無しでは、建ちません。
スポーツの世界でも、極一部の競技以外では静止視力が良くないと、持っている能力を全て発揮することは出来ません。
もしも、視力が両眼ともにバランスよく見えていない場合は、まず、メガネ又はコンタクトレンズで、屈折異常を矯正してからスポーツを楽しむことをお勧めします。「見えるからいい」というのは、大間違いです。問題は、その中身です。遠視や乱視があるけど、視力は1.0づつあるというのでは、良くありません。あくまでもその中身が、問題ない中身で、1.0づつバランスよく見えていることです。
目安としては、片目で1.0づつ、両眼1.2程度見えることが、良い土台と言えます。
たとえばサッカーのJリーガーなどは、裸眼で1.0以上見える人たちが大半を占めているようで、裸眼で1.0見えていない子供たちは、すでにJリーガーになるのは難しいかもしれません。
_動体視力
さあ、いよいよ動体視力です。
動体視力には、実は2種類あります。一つは目標物が水平方向に移動するのを見極める能力。もう一つは、遠方から一直線に近づいて来るものを見極める能力です。
前者をDVA(Dynamic Visual Acuity)といい、後者をKVA(Kinetic Visual Acuity)といいます。アメリカでは、動体視力といえばDVAを指します。しかし、これは水平に眼球を追従させる能力も強く関与しています。KVAについては、目標物が遠方から、近づいてきたときどの時点で判別可能かを測定するため、ほとんど眼球運動は関与しないこと、視力を通常の小数点で表しやすいなど、優れている面も多いようです。あくまで個人的な意見としては、DVAの場合、眼球運動、瞬間視など他の要因も関与することから、KVAのほうが関与するものが少ない分良いように感じます。
テニスのレシーブなどは、より早くコースを見極めるには大切ですし、野球のバッティングやPKの時のゴールキーパーなど大切な能力です。
ただ、この能力、5才から15才頃に急速に発達し、15〜20才をピークにして後は下降線をたどるものだということです。65才以上の高齢者になると15〜20才の約2/3程度のスピードでないと識別できなくなるということです。イチロウ選手が小学生の頃毎日父親に連れられて、バッティングセンターに通ったことこそ、今の彼の眼を作っているのです。こういった能力は、子供の時代ほど効果的に伸びます。お父さん、子供とキャッチボールしてますか?
`深視力
深視力といえば、大型や2種の運転免許と思うのは、私だけじゃないでしょう。ようするに、目標物に対する距離感ですね。特にボールを使った競技には欠かせません。野球の外野手等は、すばやくフライの落下点に入るためには重要ですし、捕球後の本塁送球についても、正しい距離感がなくてはやれません。
a瞬間視
瞬間的に、目標を見極める能力です。たとえば、バレーボールのスパイクを打つときなど、瞬間的にどこに打つかを決めないといけません。或は、ボクシングでは瞬間的にパンチを見極めないと痛い思いをすることになります。スポーツではないですが、パチスロというのがありますね。あれなんか、ホントに瞬間的に絵柄を見分けるそうですよ。
b眼球運動
両眼がバランスよく、目標に対し常に追従し、捕捉し続ける能力とでもいいましょうか。これが無いと、静止視力が良くても役に立ちません。右へ左へ、上に下にと眼球のみで目標を追うことができることは大切です。これは、すべての基本であり、家で言う土台です。この上に多くの能力が積み重なっていきます。
激しく動かすといえば、卓球でしょうね。これは顔でボールを追っていたのでは、間にあいません。c眼と手の協応動作
スポーツの場合、単純に見えているのみでは選手にはなれません。審判ならいいですけど。見えた情報を基にして、体が動いてくれないといけません。この計測にはサカディックテストというものを使います。B紙2枚分くらいの板状の計測器で、それを壁面に掛け、一定時間内にランプが無差別に点くようになっています。点灯に合わせ、手でチェックしていきます。ようするにモグラたたきです。
d輻輳・開散能力
両眼の運動として、バランスよく眼を近づけたり離したりできないと、目標を追うことはできません。比較的近距離でのスポーツ、ボクシングなどでは重要ですね。
特に、格闘技では顎を引いた姿勢が長く続くので、やや上方視した状態での輻輳力が重要になります。e調節能力
両方の眼を寄せるだけでなく、ピント調整がスムーズに出来なくてはいけません。これを激しく使うスポーツには、卓球がありますね。もともとが至近距離ですから、ピント合わせは激しいものになります。
f視野
通常、人間の静視野(目を動かさないで見れる範囲)は、耳側100度、鼻側60度、定法60度、下方70度の範囲ですから、両眼となると左右には200度の範囲が見えていることになります。
えっ?そんなに見えない?
多分、見えているけど見てないのでしょうね。周辺部は特にそうでしょう。しかし、この周辺部を上手く使える人こそが、スポーツでは良い成績を残せます。バスケットのノールックパスなんて、まさにこれですね。実際には見ていないのではなくて、視野の端の方に、しっかりパスする相手を見ているんです。NBAの名プレーヤーだったマジックジョンソンは、あまりにも有名ですね。でも、日本の武道では古くからいわれていることなんですよ。剣道だって、常に相手の目を見ながらであって、打ち込む場所は眼の中に移る視野で見ていきますよね。
ただし、視力という話になると、注視しているところから僅か5度ずれただけで、1.0が0.3位まで落っこちますが、ここではあくまでも周辺視野の話をしてます。gコントラスト感度
これは見えているものに対するコントラスト、陰影ですね。この能力が高くなると、条件の悪い黄昏時などでも、目標に対する識別能力(網膜の光感度ですね)が高くなります。
野球などで、曇り空に上がったフライなどでは、ボールが見極めにくいですね。これは、まさにコントラスト感度が関係します。しかし、これは持って生まれた能力となり、こればっかりはトレーニングをしても変わるものではありません。しかし、静止視力がしっかり見えていないと、コントラストは低下します。
hイメージング
これは今どんなスポーツでも、大切に扱われてます。つまり、イメージトレーニングですね。カーレースなどでも目を閉じて、サーキットコースを思い浮かべながら、実際に走っているときと同じようにイメージし、自分のラップタイムと比べて、同じようになれば良いトレーニングになるといわれています。或は、ゴルフ等では、これから行うショットのボールの軌跡を思い浮かべ、その軌跡に合わせショットをすることができると良いいわれます。これが特に優れていたのが、あのジャック・ニクラウスだそうです。
簡単にガイドしましたが、スポーツの種類によって、この能力の必要なものが違ってくるようです。ただ、テニスなどは特に高い能力を要求され、常にそのフルパワー状態を必要とします。
まず何よりも、自分の眼をしっかり知って下さい。近視や乱視、遠視があって視力が0.7程度だったりしていては、トレーニング以前の問題で、トレーニングしても効果は期待できませんし、持っている力が出し切っていないでしょう。また、眼の運動機能が正常かどうかも知らないといけません。もともと眼を寄せたり離したりすることに問題がある場合、これを解決することが先です。 あの、ボクシングの元世界チャンピオンの汨I手(わかります?名古屋出身)は、特に上方視においてこれに問題が有、辛くなってくると顎が上がってしまっていたそうで、トレーニング後からはめきめきと頭角を現したそうです。
いずれにしても、まず、近くにオプトメトリストがいれば、検査を受けてみて下さい。
さあ、トレーニングです。
大切なことは、効果を信じることですね。おおよそ3カ月くらいから効果は期待できるようです。一日のトレーニング時間は、長くても一つの項目について10分程度です。短時間に内容の濃いことをするほうが、効果は上がります。長時間にわたるものは、逆効果です。如何にあきないで、しかも効果を信じて続けるかが大切です。トレーニングは何から始めるほうが良いかというのは、それぞれのケースにおいて違います。しかし、あえて言うのなら、眼球運動のトレーニングから始めて下さい。見たい方向を自由自在に目だけで(首を動かさないで)追うことができることは、大きな強みです。
ここではテニスを例にとって紹介します。
瞬間視アップのために
最も簡単な方法が、何でもいいですから本を使います。瞬間的に開いたページにどんな記事が載っていたかを、思い浮かべます。そう、10回程度ですね。実践での練習では、相手コートを瞬間的に見る習慣をもつことですね。打ち込む場所は、そうして記憶することでボールを見ている時間が長くとれるので、ミスショットを減らすができます。
瞬間的に見分ける能力がつくことで、追い込まれたときなど、態勢が充分でない場合でも、一瞬相手コートを見ることで空きスペースを見つけだし、起死回生のコントロールショットを打ち込めます。
もう一つ、最も効果的なトレーニング方法は、スライド(選手の目線で撮った実践の場面の)を用意するのです。そのスポーツの場面を瞬間的(ようは一瞬見せればいい)にスクリーンに映写し、その次の行動を言わせるのです。これは、より実践的なトレーニングであり、経験量の不足がちな若い選手には効果的に疑似体験ができます。50枚くらいを、毎日見れれば2週間程度で、かなり効果は期待できるはずです。動体視力・深視力・眼球運動を養う
適当なサイズのボールを用意します。ドッジボールとテニスボールの間くらいのサイズがいいと思います。
これに紙に数字やアルファベット文字などを書いて貼り付けます。これを二人でキャッチボールをします。(一人でも出来ますが)
初めのうちは、あまりボールが回転しないように投げ合い、キャッチするまでにボールに書いてある数字や文字を読み上げます。次はできるだけ高くボールを投げ上げて、同様にします。次第にボールに回転を加えていくといいでしょう。トレーニング時間5分。
慣れてくれば、ボールのサイズを小さくして、テニスボールに直接書き込み、それを使って一本うちをする。「3!」「7!」とか言いながら打つのです。
深視力
ベースラインからボールを転がし、サービスライン上に止まるようにすることは、深視力を養うことが出来ます。
眼球運動
これは、もし自宅にメトロノームがあればいい方法があります。メトロノームの振り子に文字(新聞紙程度でいいでしょう)を貼り付け、初めはゆっくりのスピードから振り子を動かし、徐々にスピードアップすればいいでしょう。メトロノームは目の前50センチ程度に置きます。顔を動かさないで、眼だけで追うことです。トレーニング時間5分程度。この方法は、以前、研究発表されています。
あるいは古くからある方法で、目の前を通過する電車の窓の中に見える人を目で追うことも良いトレーニングになりますし、だいぶ前に「ウォーリーを探せ」という本が出てたと思いますが、これを目だけで探すとなれば、りっぱなトレーニングになります。
眼と手の協応動作
これは本来サカディックテスト機械(アキュビジョンのような)を使うのですが、どうってことないです。ゲームセンターに行ってモグラたたきゲームをして下さい。ただし、あまり何度も繰り返しても効果はないので、1回か2回程度として、その出来た回数を記録をとっておきます。毎日が理想ですが、最低週に1回から2回でいいでしょう。
もう一つ、トランプ利用の方法があります。机の四隅に、それぞれのマーク(ハート、スペード等)を記したカードを置き、よくシャッフルしたトランプを種分けをするのです。その際、頭は動かさないで、眼だけで追えばなお良いです。大切なのは、必ず毎回トランプのマークと机のマークを見ることです。覚えてしまってはだめです。速い人だと1分位で種分けができるはずです。
4〜5回程度、机のマークの位置を変えながら行うと良いでしょう。おもしろいゲームソフトを見つけました。「反射C経 Verb0.9.1」といいます。フリーウェアですので、一度やってみてはどうでしょう?以下のサイトよりダウンロードできます。
http://members.tripod.co.jp/studioj/
以上の他にもいろいろな方法があります。もともと、こうしたトレーニングはビジョン・トレーニングといって、輻輳や開散など眼球運動に異常がある場合に行うトレーニングの応用です。ですから、オプトメトリストがスポーツビジョンを担当するのはごく自然なことなのです。