オプトメトリストの世界

 optometristは通常「検眼師または視力測定医」と訳(現代英和辞典:研究社)されます。(先日、眼科専門医の方は眼鏡処方師と面白い表現をされてました。)そのことから判るように、視機能の専門家を意味します。ここでは、オプトメトリストの仕事がどんなものなのか、日本での実情と世界の様子などを書いていきたいと思います。

 オプトメトリストの仕事の対象となるのは、基本的に全ての人々になります。視力に不安がある場合のみでなく、良好な場合でも定期的に視機能をチェックすることは望ましいことです。主な勤務先としては、眼鏡店での屈折検査など総合的な仕事をしています。また、その他では、コンタクトレンズクリニックにおいて、眼科医師の基にフィティングを担当、或は一般眼科において屈折検査に従事しているものもいます。視力が出にくいロービジョンを専門にしている人、子供の検査を専門にしている人もいます。日本では国家資格としては、視機能訓練士(ORT)と呼ばれる人たちが既にいますが、これもオプトメトリストの仲間であり、オプトメトリストがすべき仕事の中の一分野の仕事をしています。

日本での現状

 日本においては、未だに法制化の見込みがなく、むしろ、途切れたといってもよいでしょう。欧米に比べ50年くらいは遅れているといえます。そのため、眼鏡業界は本来あるべき姿から大きく逸脱し、売上競争になっています。この中においては、メガネを単なる雑貨と認識している人も少なくなく、本来あるべき視生活向上を目的とした「薬」的な概念はありません。建前上、視力保護を表現している大手の眼鏡店もありますが、その中身は....。また、いくつかの団体が既に出来ており、それぞれがレベルアップを図るべく検眼業務に取り組んでいますが、その活動を裏付けれるだけの国家資格の後ろ盾がないために、参加している人、そうでない人と教育レベルに格差が出てしまっている状態です。このことはそのまま一般消費者に跳ね返っていることに、一般消費者の人たち自身に気付いて欲しいと思いますが...。
 数年前に、国会内の部会(橋本総理の基)で法案が1次案(80年代)、2次案と検討されたことがありましたが、1事案は眼科医師会、2事案は眼鏡業界の利権によって法制化にこぎつかず、流れてしまいました。これではなんのための資格制度でしょうか?無論、我々自身も国家資格が欲しい。しかし、もっと大切なのは今後を支えるであろう子供たちの視力、まだ若い20代の視力を守るためのものでなくてはいけません。眼鏡店に責任を持たせ、教育レベルを均一化するためにも、国家資格は必要なのです。現在では眼鏡店においての検眼は違法行為(眼鏡作製時の補助としてはO.K.ですが、そうでない場合は該当しにくい。1954年の富山県衛生部からの問い合わせに答える形での厚生省の見解は、「眼鏡の需要者が自己の眼に適当な眼鏡を選択する場合の補助等にとどめるべき」というのがありますが、法的権限を持っていない厚生省の、しかも1お役人の意見書というもので、しかも、えらく古い記録です)の心配が残るまま、無資格で出来てしまってます。しかし、たとえユーザーが不利益を裁判で訴えたとしても、検事は「違法行為であるが、資格制度がないために罰則を科すことが出来ないし、現状の検眼行為を完全に黒と決めつけることが出来ない」ため、起訴しない。(これも数年前、どこだったか起きてます)
 これではまったく勉強しないばかりが、見えればいいじゃない程度に考える眼鏡店もでてきます。売上のみに興味を持ち、ひたすら物販に走っている大手も多いようです。こういった本質を理解できない眼鏡店の本質を変えさせ、国民の眼を守る意味でオプトメトリスト(眼鏡処方師)の国家資格制度の早期の実現が期待されます。
 現在も、眼科医師会の啓蒙活動として、「メガネの処方は眼科医院へ」ということがあります。無論、メガネ作製時に他の疾患の心配をするケースは少なくなく、それ自体否定はしません。また、疑いを感じても眼科受診をいい加減にすすめておいて、メガネを売る眼鏡店もあるからです。
 しかし、現状では90%程度の人たちが、メガネを作るときには眼鏡店をまず最初に訪れています。この啓蒙活動によって、この数字が半分になる(最初に眼鏡店に行く人が)とは思えませんし、又その人たちが眼科に来院されても、まず対応は出来ないでしょう。それに、病気でない多くの人に対し健康保険の使用はどうかと思います。むしろ、今すべきことは、眼鏡店に直接来店している90%の人に対し、必要な人にはまず眼科受診をすすめてくれるような教育水準を持った、早く安心できるオプトメトリスト(眼鏡処方師)を育てていける、国家的なバックアップ(教育と国家資格)ではないでしょうか?
 現在、強い反対をしていた眼科医師会では、「法制化に対し一切の協力はしない」というくらいまでは、柔軟な姿勢に変化してきていますが、眼鏡業界がまとまってないのが今まででした。現在は、厚生省の認可団体である(社)日本眼鏡技術者協会が公的資格としての統一に努力しています。

世界の現状

 アジアの近隣でも既にオプトメトリストは制度化されています。
 フィリピンはもう30年以上前からあります。現在では、散瞳剤を使った検査まで認められるくらいにレベルは高い。
 お隣、韓国では10年ほど前に、眼鏡士といった資格ができ、オプティシャンレベルではありますが、少しづつ上がってきています。
 中国では、ほんの2〜3年前、大学の医学部に眼視光科ができ、眼視光医師という名で、オプトメトリストに正式に中国名が付けられ制度化されました。
 アメリカにいたっては、もう50年以上の歴史になっています。アメリカではオプトメトリック・ドクターといって、メディカル・ドクター、デンタル・ドクターと並んで、とても尊敬される仕事の一つです。日本にある米軍基地、あるいは空母などには必ずオプトメトリック・ドクターが居て、多くの兵士やその家族たちの視力の保護に務めています。検査内容も州の法律によって違いますが、散瞳剤は当然として、眼底検査、眼圧、視野検査、簡単なレーザー治療、視力の出にくいロービジョンのケアなど、病気の治療以外はオプトメトリストが担当しています。無論、眼鏡・コンタクトの購入に際しオプトメトリストの処方箋は必ず必要で、勤務地は、診療所、または病院、リハビリセンターに勤務して、多くのスタッフとともに頑張っています。また、納得できることですが、アメリカ(多くの州で)では眼鏡店が、オプトメトリストを雇うことは、法律で禁じられています。眼鏡店が雇う形になると、必要のないケースでも、すぐにメガネを作らせかねないからです。また、メガネの金額も日本より安く、検眼料と合わせても日本のように法外な金額にはなっていませんし、購入に際しての必要な明細がはっきりしています。同じ度で良く、検眼なしで作る人は、当然検査料なしの金額で購入してます。

 それにしても、中国の「眼視光医師」の誕生には驚きとショックを隠せません。なぜなら、今から18年前に私が学校を卒業後、中国から2人の留学生がやってきました。当時、中国もオプトメトリストはまだ居ませんでした。日本とどっちが先かなと思っていたのですが、あっという間に先を越されました。しかも向こうは、ドクターです。ほんとに情けない限りです。日本人は視力をどう理解してるんでしょう?